ランナーにおける休息と睡眠の重要性|走力を伸ばす“休む勇気”とは?

目次

【目次】

  1. はじめに
  2. ランナーにとっての「休息」とは?
  3. トレーニング効果を最大化する「超回復」
  4. 睡眠とパフォーマンスの関係
  5. 休息・睡眠が不足するとどうなるか?
  6. 質の高い休息をとるための戦略
  7. 理想的な睡眠の取り方と改善方法
  8. シーズン別|おすすめ休息法の実践例
  9. 年代・レベル別|ランナーの休息戦略
  10. 実例紹介|トップ選手の休息・睡眠習慣
  11. 日常生活とのバランス|仕事・家庭との両立
  12. よくある質問Q&A(睡眠時間はどれくらい?休んでも不安にならない?など)
  13. まとめ|「休む勇気」こそが力になる

38歳3児のパパランナー。

2011年に現役を引退。地元に戻り、香取小江戸マラソンや地域イベントにも積極的に参加。会社員をしながら市民ランナーとして活動。YMD NEXT×RUNの指導をオンライン中心に展開中。

【実績・経歴】

・山田中学校

 県大会優勝、県駅伝優勝

・市立船橋高校 (体育科専攻)

 県大会優勝、インターハイ出場

・駒澤大学   (文学部心理学科専攻) 

 2009年箱根駅伝第4区出場、関東インカレ決勝進出

・富士通

大田原マラソン第3位、パリマラソン17位(アジア1位)

1. はじめに|「もっと走れば伸びる」と思っていませんか?

市民ランナーでも競技者でも、「休むこと」に対して不安を抱いた経験は誰しもあるのではないでしょうか。「練習をサボってしまった」「1日走らなかったから衰えるのではないか」──そういった焦りは、実はトレーニングの本質を見失わせる要因でもあります。

実は、箱根に出場しているような有名大学も、一流実業団も1週間に1度は完全休養をとっているのです!!

パフォーマンスを伸ばすためには、練習だけでなく「休息」と「睡眠」の質が重要であることが科学的にも明らかになっています。本記事では、ランナーにとって不可欠な「休むこと」の意味を深く掘り下げ、実践に活かせる具体的な方法まで紹介していきます。


2. ランナーにとっての「休息」とは?

休息と聞いて「完全休養(何もしない日)」を想像する方も多いかもしれませんが、ランナーにとっての休息には以下の2種類があります。

  • 完全休養:身体的・精神的なリフレッシュを目的とした完全なオフ日
  • 積極的休養(アクティブレスト):ジョグやストレッチ、軽い体操など、疲労回復を目的とした軽めの運動

特に週に1〜2回は計画的に休息を取ることで、身体がトレーニングで受けたダメージから回復し、次のパフォーマンス向上に繋がります。むしろ、休まずに走り続けることの方がパフォーマンスを落とす原因になることもあります。


3. トレーニング効果を最大化する「超回復」

「超回復(supercompensation)」とは、トレーニングによって一時的に低下した身体能力が、適切な休息を挟むことで元のレベル以上に回復・強化される現象です。

この超回復には通常24〜72時間が必要とされており、強度や疲労度によってその回復時間は変動します。仮に休息を取らずに次のトレーニングを重ねてしまうと、超回復が起こる前にさらなる疲労が蓄積し、**オーバートレーニング(過剰疲労)**となってしまう危険があります。

超回復を活かすトレーニング例

曜日メニュー目的
ロングジョグ心肺機能の強化
オフまたはストレッチ超回復(完全・積極的休養)
インターバル走スピード強化
軽いジョグ疲労抜き
テンポ走スピード持久力
オフまたはジョグ回復または調整
ロング走スタミナ強化

このように「走る日」と「休む日」を計画的に配置することで、超回復を最大限に活かせます。


4. 睡眠とパフォーマンスの関係

睡眠は、最も強力な「自然の回復法」です。

研究によれば、睡眠中には成長ホルモンの分泌が促進され、筋肉の修復、エネルギーの補充、脳の整理が行われることがわかっています。特に、ランナーにとって以下のような作用が大切です。

ランナーにとっての睡眠のメリット

  • 筋損傷の回復促進
  • 炎症物質の減少
  • エネルギー再生
  • 意欲・集中力の回復
  • 免疫力の向上

また、睡眠不足が続くと、「最大酸素摂取量(VO₂max)」や「乳酸閾値」が低下し、明らかに持久力やスピードに悪影響を及ぼします。


5. 休息・睡眠が不足するとどうなるか?

ランナーにとって、休息と睡眠の不足はトレーニングの質を損なうだけでなく、ケガや病気のリスクを高める深刻な問題です。

主なデメリット

  • 持久力・スピードの低下
  • 筋肉疲労の蓄積
  • 免疫力の低下(風邪やインフルエンザにかかりやすくなる)
  • 精神的な不調(やる気が出ない、集中力が続かない)
  • 怪我の頻発(疲労骨折、筋断裂、関節炎など)

睡眠不足の状態で高負荷のトレーニングを行うと、フォームの崩れから怪我のリスクも高まり、長期離脱につながる可能性もあります。

6. 質の高い休息をとるための戦略

「ただ何もしない」だけが休息ではありません。特にランナーにとって大切なのは、目的に応じた休息法を選択することです。ここでは、質の高い休息をとるための具体的な方法を解説します。

① アクティブレスト(積極的休養)

軽いジョグやウォーキング、スイミング、ストレッチなどを行い、血流を促進して疲労物質を排出させます。完全休養よりも精神的な満足感が得られやすい点もメリットです。

おすすめメニュー:

  • 30〜40分のEペースジョグ(会話できる強度)
  • 動的ストレッチやヨガ
  • バイクや水中ウォーキング

② 完全休養

まったく運動を行わない「完全オフの日」も、定期的に取り入れるべきです。特に以下のようなタイミングでは、積極的に休むことが効果的です。

  • レース直後
  • 強度の高いトレーニングの翌日
  • 睡眠不足が続いた時
  • 精神的に落ち込んでいる時

③ マッサージ・温冷交代浴

リカバリーの定番とも言える方法です。筋肉の張りやコリを和らげるだけでなく、副交感神経が優位になることで自律神経のバランスも整えやすくなります。

  • 自宅でできるセルフマッサージ
  • 電気マッサージガンやフォームローラー
  • 交代浴(冷水30秒⇄温水1〜2分を3セット程度)

7. 理想的な睡眠の取り方と改善方法

次に、ランナーがパフォーマンスを最大化するために必要な「理想的な睡眠」について解説します。

① 必要な睡眠時間

  • 一般的な成人:7〜8時間
  • トレーニング期のランナー:8〜9時間
  • ジュニアアスリート:9〜10時間

トレーニング負荷が大きい時期には、それに見合った「睡眠量の確保」が必須です。

② 質の高い睡眠の条件

質の高い睡眠とは、「深く眠れて」「中途覚醒が少なく」「すっきり起きられる」状態です。そのために以下の習慣が効果的です。

◎就寝前のルーティン

  • 寝る90分前に入浴(深部体温を下げやすくする)
  • スマホ・PCは寝る1時間前にオフ
  • 暗めの照明で副交感神経を優位に
  • 軽いストレッチで筋肉を緩める

◎日中の工夫

  • 朝起きたらすぐ日光を浴びる(体内時計の調整)
  • 午後の昼寝(15〜30分)は回復に効果的
  • 過度なカフェインやアルコールを避ける

③ 睡眠の質を高める補助アイテム

  • アイマスク/耳栓:光・音の遮断
  • 加湿器/空気清浄機:呼吸の質を改善
  • CBDオイルやグリシン:リラックスをサポート(使用は要注意)

8. シーズン別|おすすめ休息法の実践例

年間を通して、練習期・レース期・オフ期で休息や睡眠の取り方を変えていくことが重要です。

■ 走り込み期(夏・冬)

  • 走行距離が増える分、週に1〜2回の完全休養を必ず設定
  • 日中に昼寝や仮眠を入れて回復時間の積み増し

■ レース期(秋・春)

  • 疲労の蓄積を避けるために、スピード練習後の翌日は必ず軽め
  • 大会前日は早寝を意識し、大会当日は睡眠時間よりも“睡眠の質”

■ オフ期(冬休み・春休み等)

  • 思い切って2〜3日間走らない「完全オフウィーク」もアリ
  • 筋トレやクロストレーニングを導入して精神的リフレッシュ

9. 年代・レベル別|ランナーの休息戦略

年齢や競技レベルによっても、適切な休息の取り方は変わります。

◎ 学生ランナー

  • 成長ホルモンの分泌が活発な夜10時〜深夜2時の間に寝ること(有名学生ランナーは夜9時~10時には寝ています)
  • 部活で疲れていても、自主練のやり過ぎは逆効果

◎ 一般市民ランナー(サブ4〜サブ3.5レベル)

  • 仕事や家事との両立を考え、週2日の休息日を設けるのが理想
  • 疲れを感じたら、「予定通りの練習」より「柔軟な調整」を優先

◎ エリートランナー・競技者

  • トレーニングボリュームが大きい分、睡眠は1日9時間以上確保
  • 「完全休養を取る日」もトレーニング計画に組み込む

次回は以下の章を続けてお届けします:

  1. 実例紹介|トップ選手の休息・睡眠習慣
  2. 日常生活とのバランス|仕事・家庭との両立
  3. よくある質問Q&A(睡眠時間はどれくらい?休んでも不安にならない?など)
  4. まとめ|「休む勇気」こそが力になる

10. 実例紹介|トップ選手の休息・睡眠習慣

トップアスリートたちは「練習の質」だけでなく、「休息・睡眠の質」にも非常に高い意識を持っています。ここでは、著名ランナーたちの実例を参考にしながら、どのようなリカバリー戦略を実践しているかをご紹介します。

◎ エリウド・キプチョゲ(マラソン世界記録保持者)

  • 睡眠:毎日9〜10時間
    • 夜の7〜8時間+昼寝1〜2時間
  • 休息:トレーニング後は完全に体を横にして「静的休息」
  • 「自分の身体は実験室。回復のためなら昼寝も欠かせない」と公言

◎ 大迫傑(日本マラソン元記録保持者)

  • 毎日のトレーニング後にはマッサージとアイスバスを取り入れていた
  • 「走らないこと=トレーニングの一部」として、完全休養日を明確に設定

◎ 一般市民ランナーAさん(サブ3達成者)

  • 平日は仕事後に走るため、意識的に就寝時間を前倒し
  • 疲れた日は「練習しない」選択をすることで、怪我ゼロを実現
  • 睡眠の質を高めるために、スマートウォッチで毎晩の「睡眠スコア」を計測し改善を続けている

こうした事例からも分かる通り、「トップレベルで戦う人ほど“休むことの重要性”を理解している」という事実があります。


11. 日常生活とのバランス|仕事・家庭との両立

多くの市民ランナーにとって、「走る時間」と同じくらい大切なのが仕事や家庭との調和です。特に育児中やフルタイム勤務の方は、自由に時間を確保するのが難しいでしょう。

◎ 忙しい人のための休息と睡眠の工夫

  • 朝ランナーなら、21:30〜22:00には就寝する習慣を
  • 週末に練習量が増える分、月曜日は“完全オフ”を設定
  • 眠りが浅いときは、「寝る前のスマホ断ち」を徹底
  • 日中に15分の「パワーナップ(仮眠)」を習慣化

◎ 家庭の理解を得るには?

  • 家族と「練習・休養スケジュール」を共有する
  • 無理に練習を押し通さず、家族時間を最優先にする日もつくる
  • ケガや体調不良時は無理せず「走らない選択」で信頼を得る

「休息」は家族との時間を大切にすることにもつながり、結果的に心身の健康バランスが保たれます。

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12. よくある質問Q&A

Q1. どれくらい寝ればいいですか?

A:一般的に7〜8時間が理想。トレーニング期は8〜9時間を目指しましょう。

短時間しか眠れない日が続くと、免疫力の低下や持久力の減退につながるため注意が必要です。


Q2. 疲れて休むと不安になります。どうしたら?

A:休むことも練習の一部。むしろ休まず走り続ける方が危険です。

「走っていない=トレーニングしていない」ではなく、「回復させている=トレーニング効果を高めている」と認識を変えることが大切です。


Q3. 休んだ日の過ごし方におすすめはありますか?

A:ストレッチ、温浴、散歩などの軽い活動が最適です。

また、栄養のある食事・良質な睡眠をとることで、翌日の練習がより効果的になります。


13. まとめ|「休む勇気」こそが力になる

走ることに一生懸命になるほど、「もっとやらなきゃ」「休んでいる場合じゃない」と思いがちです。しかし、本当に力をつけていくランナーは、身体と心の声に耳を傾け、回復の時間を意図的に確保しています。

休むことはサボりではなく、「未来の走力への投資」です。
そして、質の高い睡眠は「最高のリカバリーツール」であり、パフォーマンスを裏から支える柱です。

最後に──

  • 週に1〜2回は完全休養日を設定
  • 強度の高い練習後は、積極的休養や睡眠時間をしっかり確保
  • 家庭・仕事とのバランスも意識し、無理なく継続できる仕組みを整える

「よく休む者こそ、速くなる」──そんな意識で、あなたの走りをさらに一段階引き上げてみませんか?

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