
【目次】
- ランナーにとっての食事とは何か?
- 栄養素の基礎知識(炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル・水分)
- 目標別食事戦略(減量・スタミナ向上・スピード向上)
- 練習前後の食事タイミングと内容
- レースに向けたカーボローディング完全解説
- レース当日の食事と補給
- 練習量・走力別の食事例(初心者〜サブ3まで)
- よくあるNGパターンと食事改善のポイント
- サプリメント・プロテインの正しい使い方
- 実際の1週間メニュー例
- 食事管理の方法(アプリ・記録・可視化)
- 疲労回復・免疫強化・怪我予防につながる食事
- 季節・環境別の注意点(夏・冬・暑熱順化など)
- 女性ランナー向け食事の工夫
- よくあるQ&Aと食事の継続のコツ
- まとめ|走力を伸ばす「習慣」としての食事

38歳3児のパパランナー。
2011年に現役を引退。地元に戻り、香取小江戸マラソンや地域イベントにも積極的に参加。会社員をしながら市民ランナーとして活動。YMD NEXT×RUNの指導をオンライン中心に展開中。
【実績・経歴】
・山田中学校
県大会優勝、県駅伝優勝
・市立船橋高校 (体育科専攻)
県大会優勝、インターハイ出場
・駒澤大学 (文学部心理学科専攻)
2009年箱根駅伝第4区出場、関東インカレ決勝進出
・富士通
大田原マラソン第3位、パリマラソン17位(アジア1位)
1. ランナーにとっての食事とは何か?
ランナーの食事は「栄養を摂るための行為」ではなく、「パフォーマンスを最大化するトレーニングの一環」として位置付けるべきです。食べる内容、量、タイミングは、走る内容と同じくらい重要です。
- 疲労回復
- 筋肉の修復と成長
- エネルギー維持
- 免疫力の維持
- レースパフォーマンス向上
これら全てが、食事の設計によって左右されます。
2. 栄養素の基礎知識
炭水化物(糖質)=エネルギーの主役
- 筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄積
- 持久走では“ガス欠”防止に不可欠
- 摂取源:ご飯、パン、パスタ、果物、芋類
タンパク質=筋肉の材料
- トレーニング後の筋肉修復に不可欠
- 摂取源:鶏肉、魚、大豆製品、乳製品、卵
脂質=長時間の運動エネルギー
- ランナーは適度な脂質も必要(脂質制限は逆効果)
- 良質な脂:ナッツ、アボカド、青魚、オリーブオイル
ビタミン・ミネラル=調整役
- 鉄分不足 → 貧血、持久力低下
- ビタミンB群 → エネルギー代謝の要
- カルシウム・ビタミンD → 骨強化
- 摂取源:野菜、海藻、魚、キノコ類、レバー
水分・電解質=体温調節と代謝促進
- ランニング中は1時間で1リットル近く汗をかくことも
- ナトリウム・カリウム補給も意識
✅詳しくはこの記事もどうぞ!
ランナーのための栄養素の基礎知識|走りを支える6つの必須成分とは?
3. 目標別の食事戦略
減量したいランナー向け
- 摂取カロリー<消費カロリー
- でも糖質は減らしすぎない(ガス欠の元)
- 高タンパク・低脂質が基本
- 食事タイミングを一定にして間食を計画的に
スタミナをつけたいランナー向け
- 炭水化物を意識的に多めに摂る
- 食物繊維を摂りすぎると消化不良に注意
- 鉄分・ビタミンCで酸素運搬能力向上
スピードを上げたいランナー向け
- 筋合成を助けるためにトレ後30分以内のタンパク質摂取
- クレアチンやBCAAの導入も検討
4. 練習前後の食事タイミングと内容
時間帯 | 内容と目的 | 食事例 |
---|---|---|
練習3時間前 | 軽めの炭水化物中心、脂質は控える | おにぎり+バナナ、エネルギーゼリー |
練習直後(30分以内) | 糖質+タンパク質をゴールデンタイムに摂取 | 牛乳+プロテイン、納豆ごはん、バナナ |
練習3時間後 | 通常の食事+野菜でバランスよく | 鶏胸肉の定食+味噌汁+ご飯+青菜の和え物 |
5. レースに向けたカーボローディング
1週間前〜3日前
- トレーニングを軽めにし、徐々に炭水化物を増やす
- 水分と塩分も意識
- 白米、うどん、フルーツゼリーなどを中心に
前日
- 炭水化物は最大化、でも脂質と食物繊維は控えめ
- 例:うどん+卵、食パン+ハチミツ+ヨーグルト
✅詳しくはこの記事もどうぞ!!
▶レース直前のカーボローディングとは?|やり方・タイミング・NG例を徹底解説!
6. レース当日の食事と補給
- スタート3時間前: 白米おにぎり2個+バナナ+味噌汁
- スタート30分前: エネルギージェル+スポーツドリンク200ml
- レース中(30km以降): ジェル1個+水(給水所で)
7. 練習量・走力別の食事例
初心者(週3回走る人)
- 食事で無理に糖質制限せず、間食や夜食の内容を見直す
- 朝:ご飯+納豆+味噌汁、昼:パスタ+野菜、夜:魚+ご飯+サラダ
中級者(サブ4〜3.5)
- 高タンパク・高炭水化物+ミネラル意識
- 間食にプロテインバー・ゼリーを活用
上級者(サブ3〜2.5)
- グリコーゲンローディングの知識を活用
- 食事量が多くなるため「消化に良い」ことも重要
- 鉄分補給と抗酸化食品(ビタミンC・E)を意識
8. よくあるNGパターンと改善例
NG食習慣 | 改善アドバイス |
---|---|
ラーメン・揚げ物が多い | 消化の良い主食+脂質控えめに |
夕食が遅くてドカ食い | 小分けにして19時前後に軽く摂取 |
朝食を抜いている | 走る日は特に、糖質+タンパク質を摂取 |
9. サプリ・プロテインの正しい使い方
ランナーにとってプロテインやサプリは、栄養を“補う”手段。基本は食事で栄養を摂り、不足時に活用しましょう。トレーニング後はホエイプロテインを30分以内に摂ると筋肉の修復を助けます。強度の高い練習前後にはBCAAやEAAが有効。女性は鉄分+ビタミンCで貧血対策も。大事なのは「必要なときに、必要な量だけ」。サプリに頼る前に、まずは食生活の改善を意識しましょう。
- プロテイン: トレ後30分以内+朝食代わりにも活用
- 鉄サプリ: 医師と相談の上、女性ランナーにおすすめ
- BCAA/EAA: 強度の高いトレーニング時の回復支援
✅サプリメントについて、詳しく知りたい方はこの記事もどうぞ!
▶ランナーのためのサプリメント・プロテイン完全ガイド|必要な栄養素と選び方
10. 1週間分の食事メニュー例
1週間分の食事メニューのモデルです。練習の内容(jogやスピード練習、距離走)によって食事の量や内容は調整します。
朝食 | 昼食 | 夕食 | |
月曜日 | ご飯、納豆、卵焼き、味噌汁、バナナ | 鶏胸肉と野菜の炒め物、玄米、味噌汁 | 焼き鮭、大根サラダ、雑穀ごはん、豆腐の味噌汁 |
火曜日 | パン、ゆで卵、ヨーグルト、りんご、牛乳 | 豚の生姜焼き、白ごはん、キャベツの千切り、味噌汁 | 麻婆豆腐、青菜のナムル、ご飯、わかめスープ |
水曜日 | おにぎり(梅・鮭)、味噌汁、キウイ | サバの味噌煮、ひじき煮、玄米、味噌汁 | 鶏団子鍋(白菜・豆腐・春菊)、うどん |
木曜日 | トースト、目玉焼き、ベーコン、ヨーグルト | チキンカレー、サラダ、フルーツ | ブリの照り焼き、小松菜のお浸し、麦ごはん、味噌汁 |
金曜日 | 雑穀おにぎり、味噌汁、温泉卵、みかん | 牛丼、味噌汁、青菜炒め | 白身魚のムニエル、ポテトサラダ、玄米、コンソメスープ |
土曜日 | バナナ、ヨーグルト、オートミール、ナッツ | 冷やしうどん(鶏肉・ねぎ・卵)、果物 | 豚しゃぶサラダ、雑穀ごはん、味噌汁 |
日曜日 | ホットケーキ、スクランブルエッグ、ミルク | 焼き魚定食(さば・ごはん・味噌汁・漬物) | 豆腐ステーキ、野菜炒め、ご飯、味噌汁 |
11. 食事管理の方法
食事の管理は、現状を把握し、改善ポイントを見つける第一歩です。多くのランナーが「食べてるつもり」「バランスよくしているつもり」になりがちですが、記録することで初めて“実態”が見えてきます。
おすすめアプリ:
- あすけん(日本語、使いやすく食材登録数も豊富)
- MyFitnessPal(英語中心だがトレーニングとの連携が強い)
- カロミル(シンプルな日本語UI)
ポイント:
- 体重・摂取カロリー・PFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)バランスを確認
- 特に「タンパク質不足」と「脂質過多」が見えやすくなる
方法2:写真で記録
- 毎食スマホで撮影してGoogleフォトやLINE Keepに保存
- 週末に見返してバランスや食べ過ぎをチェック
方法3:ノートに簡単記録(アナログ派向け)
- 朝・昼・夕・間食をそれぞれ手書きで記録
- トレーニング日誌と一緒にまとめると効果的
12. 疲労回復・免疫力強化の食事
疲労回復を助ける食材と栄養素
栄養素 | 効果 | 食材例 |
---|---|---|
クエン酸 | 乳酸の分解を助ける | 梅干し、酢、柑橘類、黒酢ドリンク |
ビタミンB群 | エネルギー代謝を促進 | 豚肉、納豆、レバー、卵 |
タンパク質 | 筋肉の修復・合成 | 鶏肉、魚、豆腐、卵、プロテイン |
免疫力を保つ食習慣
- 腸内環境を整える: ヨーグルト、納豆、キムチなど発酵食品を毎日
- ビタミンC: ピーマン、ブロッコリー、いちご、柑橘類で毎日100mg以上
- 鉄分: 特に女性は月経時に貧血注意。レバーや赤身肉+ビタミンCで吸収促進
✅詳しくはこの記事もどうぞ!
▶疲労回復・免疫力強化に効く食事術|走り込み期・レース後・体調不良予防にも!
13. 季節・環境別の注意点
夏(高温多湿)
- 水分+電解質の補給が最優先
- 練習30分前から水またはスポーツドリンクで500ml程度摂取
- ナトリウム入りタブレットや梅干しも有効
- 冷たいものを摂りすぎると内臓が冷えてパフォーマンス低下
冬(寒冷時期)
- 温かい汁物・鍋料理で体温維持
- 味噌汁・スープは一日1〜2回を習慣に
- 乾燥による風邪予防に粘膜保護食品を
- ビタミンA(人参・かぼちゃ・レバー)
合宿や遠征時
- コンビニ食中心になるなら…
- 主食+サラダチキン+味噌汁+ゆで卵など、組み合わせを工夫
- 外食では脂質・塩分が増えるため、帰宅後に調整を意識
14. 女性ランナー向けの工夫
貧血予防は最優先課題
- 鉄分+ビタミンCの組み合わせで吸収UP
- 例:レバー+小松菜+オレンジジュース
- 月経による鉄損失は「通常時の2倍以上」にも
- サプリで補うならヘム鉄+葉酸タイプを推奨(医師と相談を)
✅詳しくはこの記事もどうぞ!
▶女性ランナーのための食事術|貧血予防・ホルモン対策・美容と走力の両立まで完全解説!
ホルモンバランスに応じた食事
タイミング | 体の変化 | 食事の工夫 |
---|---|---|
月経前 | むくみ・疲れやすさ | 塩分控えめ、鉄分強化、イライラ対策にMg食品(ナッツなど) |
排卵期 | 代謝が上がる | 炭水化物をやや増やしてもOK |
月経後 | 安定期 | ハード練習のタイミング。PFCバランス重視 |
15. よくあるQ&A
Q1. 糖質を摂りすぎると太りますか?
→ 運動量に対して適切なら太りません。問題は「脂質と一緒に高糖質を摂ること」。炭水化物単体で摂る(例:おにぎり、うどん)方が太りにくい。
Q2. 朝食は抜いてもいいですか?
→ 基本的にはNG。特に朝練のある日は“脳と筋肉の燃料”が不足し、パフォーマンスも怪我リスクも高まります。バナナやプロテインドリンクだけでも摂りましょう。
Q3. プロテインって必要ですか?
→ タンパク質を食事で充分摂れていれば不要ですが、忙しい朝やトレ後すぐのタイミングに“補助”として非常に有効です。
Q4. 外食ばかりになってしまう時の対策は?
→ コンビニや外食チェーンでも以下を意識:
副菜:野菜スープ、味噌汁、ゆで卵、海藻
主食:おにぎり、ごはん
主菜:焼き魚、サラダチキン、卵料理
16. まとめ|「食べる」ことは「走る」ことと同じくらい大事
ランナーにとっての食事とは、単なる日常習慣ではなく、トレーニングの一部であり、自己管理の要です。
- 良い練習は良い食事から
- 疲れを残さない食事が継続の鍵
- 結果を出す人は、食事の質とタイミングを大切にしている
完璧である必要はありませんが、「今日は走るから炭水化物を増やそう」「疲れているからタンパク質を意識しよう」という小さな工夫が、日々の成長につながります。
走るだけでなく、食べることも強くなる一歩。この記事をきっかけに、あなた自身の「ベストな食事習慣」を見つけてください。